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SESの利益率は?粗利・マージンの中身と利益が残らない原因

SESの利益率とは

SESの利益率とは、SES会社がお客様から受け取る単価のうち、どれだけが会社の利益として残るかを示す割合です。ただ「利益」にはいくつかの段階があり、SESの話では次の3つが混ざって使われています。

言葉計算SESで何を表すか
粗利率(売上−売上原価)÷売上単価から、現場に出ているエンジニアの人件費(BPなら仕入れ代金)を引いた残りの割合
マージン率(単価−エンジニアの給与)÷単価単価のうち、エンジニアの給与に回らなかった部分の割合。派遣ではこの形で公開が求められている
営業利益率営業利益÷売上粗利から営業・管理・採用などの費用を払ったあと、会社に残る割合

一般に「マージン」と言うときは会社の取り分全体を指すことが多く、そこには社会保険料の会社負担も営業の人件費も含まれます。マージン率が高く見えても、会社にそのまま残るわけではありません。

社員を出す場合とBPから人を仕入れて出す場合でも、原価の中身が変わります。社員なら給与と社会保険料の会社負担が原価になり、BPなら上位に請求する単価とBPに払う仕入れ代金の差が粗利になります → SESのBP。

平均はどれくらいか

SES会社の粗利率や営業利益率を集計した公的な統計はありません。公的な数字で確かめられるのは、次のような範囲です。

派遣のデータから見たマージン

厚生労働省の労働者派遣事業の報告では、「情報処理・通信技術者」の派遣料金は1日8時間換算で34,382円(税込)、派遣された人の賃金は21,032円でした(令和6年度)。料金を税抜きにして比べると、賃金は料金の約67%で、残りの約33%が派遣会社の取り分(社会保険料の会社負担、有給休暇の費用、営業・管理の費用、利益を含む)です。全業務の平均では約30%でした(出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」から計算)。

派遣はSESとは契約の形が違いますが、ITエンジニアを外に出して料金を受け取る仕事の取り分がどれくらいかを、公的な数字で見られる資料です。単価の水準は別のページにまとめています → SESの単価。

上場しているIT企業の営業利益率

客先常駐の技術者サービスを大きく手がける上場企業の決算では、2026年3月期の営業利益率が、株式会社DTSで約12.2%(売上高1,352億13百万円、営業利益164億34百万円)、株式会社NSDで約16.2%(売上高1,178億13百万円、営業利益190億73百万円)、株式会社システナで約16.3%(売上高944億円、営業利益153億67百万円)でした(出典:各社「2026年3月期 決算短信」から計算)。いずれも受託開発やソリューション事業を含む会社全体の数字で、SESだけの利益率ではありません。規模の大きい会社でも、営業利益として残るのは売上の1割台だということがわかります。

マージンの中身:会社が負担しているもの

単価から給与を払ったあとの残りで、会社は次の費用をまかなっています。

  • 社会保険料の会社負担:日本人材派遣協会によれば、2025年度で給与の約16.3%です(労災保険0.3%、雇用保険0.9%、健康保険約5.0%、介護保険約0.7%、子ども・子育て拠出金約0.4%、厚生年金保険約9.2%)(出典:日本人材派遣協会「データ」)。協会けんぽ東京支部では、令和8年3月分から健康保険料率が9.85%、2026年4月分から子ども・子育て支援金率0.23%が加わっています(出典:全国健康保険協会「令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」)。
  • 有給休暇中の給与:休んでいる日も給与は払いますが、精算幅を下回れば請求額が減ります。
  • 交通費、研修や資格の費用、福利厚生。
  • 営業と管理の人件費:案件を取ってくる営業、契約・請求・支払いを回す事務の人件費です。
  • 採用の費用:求人広告や紹介手数料。
  • 待機の費用:案件が決まっていない社員の給与と社会保険料です。

計算の例で見てみます。単価60万円で給与42万円(単価の70%)の社員の場合、会社負担の社会保険料は約6.8万円で、残るのは約11.2万円です。この11.2万円から営業・管理・採用・待機の費用を払います。社員1人あたりで残る金額が小さいので、営業1人の人件費を何人分の粗利で支えているかが経営の数字として大事になります。社長の方からよく伺うのは、社員1人あたりの利益が月15万円ほどで、月60万円かかる営業を1人置くと社員4人分の利益がそれだけで出ていく、という計算のお話です。

利益が残らない原因

多重下請けで単価が削られる

商流の下にいるほど、上の会社が取り分を取ったあとの単価で契約することになります。公正取引委員会がソフトウェア業の会社に行ったアンケートでは、作業に関わらずに取り分だけを取る会社がいると感じたことがある割合が、最終の下請けで33.5%でした(出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」2022年)。同じ調査では、買いたたきに当たると考えられる経験が15.7%、支払遅延・不払いが7.4%でした。商流の構造は別のページで詳しく書いています → SESの商流。

待機している社員の給与

案件が終わって次が決まるまでの間も、社員の給与と社会保険料はかかります。会社の都合で休ませる場合、労働基準法26条により、平均賃金の60%以上の休業手当を払う必要があります。売上がない月に固定の費用だけが出ていくので、待機が2人、3人と重なると、その月の利益が一気に減ります → SESの待機。

給与は上がるのに単価が据え置かれる

採用の競争で給与を上げても、お客様との単価は契約の更新のときにしか変わりません。更新のたびに単価の話を持ち出さないでいると、給与だけが上がって粗利が薄くなります。

BPの比率が高い

自社の社員がいない案件にBPの要員を出すと、売上は増えますが粗利は薄くなります。パートナーの要員は自社の社員に比べて利益が半分以下でも、成約の多くがそこに頼っている、という声をよく伺います。

精算や請求の取りこぼし

超過時間の請求を忘れる、お客様側とBP側で精算の条件が違うのに同じだと思い込む、単価変更を請求書に反映し忘れる、といったずれは、1件ずつは小さくても毎月の粗利から抜けていきます → SESの精算幅。

利益率を上げるために経営者ができること

ここからはSES会社の経営の実務です。

1人ごと・案件ごとの粗利を出す

会社全体の数字だけでなく、エンジニア1人ごと、案件ごとに「単価−(給与+会社負担の社会保険料)」「売りの単価−仕入れの単価」を並べると、どこで利益が薄いかが見えてきます。社員とBPは分けて見ます。

見る数字社員を出す案件BPを出す案件
粗利単価−給与−会社負担の社会保険料売りの単価−仕入れの単価
待機の負担会社が持つ原則としてかからない
1件あたりの粗利の大きさ大きくしやすい小さくなりやすい
増やすのに必要なもの採用と育成BPとのつながり

BPの案件で取り分を決めておく

BPの要員で決まる案件は、取り分の決め方で粗利が大きく変わります。月120万円の案件で10万円しか取らなかったので、次の案件では15万円にした、というお話を伺ったことがあります。取り分を案件ごとにその場で決めていると、営業の担当によって粗利がばらばらになります。営業の成果報酬を粗利額の25〜30%にしている、というお話もあり、売上ではなく粗利で営業を評価する会社もあります。フリーランスの方を出すほうが会社に残る金額は大きい、という声も伺います。

単価の交渉を更新のたびに行う

契約の更新は3か月ごとが基本です。更新の1〜2か月前に、現場での役割の変化とお客様の評価をまとめ、単価の見直しを持ち出します。役割が変わったのに単価が据え置きのままになっていないかを、更新の一覧で毎回確かめます。

商流を上げる

同じエンジニアでも、エンドに近い位置で契約できれば受け取る単価は上がります。深い商流の案件で実績を積み、その実績をもとに元請けの会社と直接取引を始める、という順番が現実的です。

待機を短くする

案件の終了は1か月前に知らされることが多いので、終了の連絡が来る前から次の案件を探し始めます。複数人で入っている現場は長く続きやすい、というお話もよく伺います。

精算と請求のずれをなくす

お客様との契約とBPとの契約で、精算幅・端数の扱い・締め日をそろえておくと、差額が出にくくなります。月末に稼働表を集めて請求書を作るときに、単価の変更や入場・退場が反映されているかを確かめる手順を決めておくことも、粗利を守ることにつながります → SESの請求書。

請求の事務を任せるという選択肢

RY consulting は、SES企業の請求事務だけを引き受けています。御社の書式でのお客様先への請求書の作成、BP・フリーランスからの請求書の照合(相違があったところだけお知らせします)、営業担当ごとの稼働表の提出状況のお知らせ、月に一度の確認事項(入場・終了・単価変更)の確認を行います。御社にお願いするのは、稼働表と請求書を共有フォルダに入れていただくことと、月1回の確認事項へのご回答だけです。料金は月額でエンジニア10名まで50,000円、11〜20名70,000円、21〜30名90,000円、31名以上は個別にお見積りします(いずれも税別、初期費用100,000円・税別)。契約期間の縛りはなく、最短3営業日で作業を始められます。請求のずれで粗利が漏れていないか気になる方は、まずは15分で相談するところから始めてみてください。

出典

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