SESの精算幅とは?上下割・中間割の計算方法と例
SESの精算幅とは
SESの精算幅とは、月額の報酬をそのまま払う稼働時間の範囲のことで、その範囲を上回れば超過分を足し、下回れば不足分を引いて精算します。たとえば「月額60万円、精算幅140〜180時間」なら、その月の稼働が145時間でも175時間でも請求額は60万円で、190時間なら超過の10時間分を足し、130時間なら不足の10時間分を引きます。
精算幅は法律で決まっているものではなく、お客様先とSES会社、SES会社とBP(協力会社)のあいだで、契約ごとに合意して決める条件です。140〜180時間がよく使われますが、共通の基準ではありません。SESの多くは準委任契約で、働いた時間に応じて報酬を決める形をとるため、その時間の幅と精算のやり方を注文書や個別契約書に書いておきます。契約の性質は → SESの準委任契約 で書いています。
精算幅のある契約と、時間に関係なく金額が決まっている固定精算の違いは次のとおりです。
| 稼働時間の定め | 請求額 | 超過・控除の単価 | |
|---|---|---|---|
| 上下割 | 上限・下限あり | 範囲の外で増減する | 超過と控除で違う |
| 中間割 | 上限・下限あり | 範囲の外で増減する | 超過と控除で同じ |
| 固定精算 | 定めなし | 毎月同じ | なし |
お客様先にとっては、範囲の中なら毎月の費用が読めて、支払いの処理も楽になります。SES会社にとっては、祝日の多い月や有給を取った月でも、下限を割らなければ売上が変わらないので、毎月の売上が安定します。
上限・下限の決め方
上限と下限は、標準の稼働時間を出して、その前後に幅をつけて決めるのがよくある決め方です。1日8時間で月20日働くとすると標準は160時間になり、そこに前後20時間ずつの幅をつけると140〜180時間になります。営業日が18日の月なら8時間×18日=144時間、22日の月なら176時間なので、140〜180時間あれば、月ごとの営業日の差をおおむね吸収できます。
週の稼働日数が少ない契約では、幅もその割合で小さくします。
| 稼働 | 月の稼働日の目安 | 精算幅の例 |
|---|---|---|
| 週5日 | 20日 | 140〜180h |
| 週4日 | 16日 | 112〜144h |
| 週3日 | 12日 | 84〜108h |
幅を狭くするほど、毎月の超過・控除が出やすくなり、計算と確認の手間が増えます。逆に幅を広くとるほど、範囲内で収まる月が増えます。下限だけを決めて上限を決めない契約や、上限を超えても事前の承認がなければ超過を認めない契約もあるため、精算幅の数字だけでなく、その周りの条件まで注文書で確かめておきます。
精算幅を決めるときに、あわせて決めておきたい条件は次のとおりです。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 精算幅 | 140〜180時間 |
| 割り方 | 上下割、中間割、超過・控除の単価を個別に決める |
| 精算単位 | 15分、30分、1時間 |
| 端数処理 | 時間単価で1円未満切り捨て、精算額で切り捨て など |
| 月途中の入場・退場 | 営業日で日割り、暦日で日割り、初月は時間単価 など |
| 営業日が少ない月 | 年末年始・GWの月は下限を下げる など |
| 超過の事前承認 | 上限を超える見込みが出たら事前に連絡する |
上下割の計算式と例
上下割は、超過するときは上限時間で、控除するときは下限時間で月額を割って時間単価を出すやり方です。
- 超過単価 = 月額 ÷ 上限時間
- 控除単価 = 月額 ÷ 下限時間
月額60万円、精算幅140〜180時間、時間単価は1円未満切り捨てで計算します。
| 稼働時間 | 計算 | 請求額 |
|---|---|---|
| 190時間 | 600,000+3,333円×10時間 | 633,330円 |
| 160時間 | 範囲内 | 600,000円 |
| 130時間 | 600,000−4,285円×10時間 | 557,150円 |
超過単価は600,000÷180=3,333.33…円で3,333円、控除単価は600,000÷140=4,285.71…円で4,285円です。上下割では、超過の単価が控除の単価より低くなるので、超過した月の上乗せは小さく、下回った月の差し引きは大きくなります。
中間割の計算式と例
中間割(中割)は、上限と下限の真ん中の時間で月額を割り、超過も控除も同じ時間単価で計算するやり方です。
- 基準時間 =(上限時間+下限時間)÷ 2
- 時間単価 = 月額 ÷ 基準時間
同じ月額60万円、140〜180時間なら、基準時間は160時間、時間単価は600,000÷160=3,750円です。
| 稼働時間 | 計算 | 請求額 |
|---|---|---|
| 190時間 | 600,000+3,750円×10時間 | 637,500円 |
| 160時間 | 範囲内 | 600,000円 |
| 130時間 | 600,000−3,750円×10時間 | 562,500円 |
上下割と比べると、190時間の月は4,170円多く、130時間の月は5,350円多く受け取れる計算になります。計算は簡単ですが、お客様先にとっては超過したときの負担が大きくなるので、お客様先が上下割を選ぶ理由はここにあります。
精算幅の計算機
- 超過・控除の時間
- 1時間あたりの単価
- 超過・控除の金額
- 請求額(税抜)
- 消費税(10%)
- 請求額(税込)
計算の結果は目安です。契約書の条件で確かめてください。
記入例(エンジニア3名)と空のひな形の2枚です。超過・控除は、この計算機と同じ式(端数は1円未満切り捨て)で計算します。
日割りの計算式と例
月の途中で入場・退場した月は、月額と精算幅をその月に働いた日数の割合で按分します。
- 日割りの月額 = 月額 × 稼働日数 ÷ その月の営業日数
- 日割りの精算幅 = 上限・下限 × 稼働日数 ÷ その月の営業日数
営業日が20日の月に6日だけ働いた場合、月額60万円なら600,000×6÷20=180,000円、精算幅は140×6÷20=42時間から180×6÷20=54時間になります。実稼働が48時間なら範囲内なので、請求額は180,000円です。
割り切れない月は端数の扱いが問題になります。営業日が19日の月に8日働いた場合、月額は600,000×8÷19=252,631.57…円、精算幅は58.94…〜75.78…時間になり、時間の幅を小数第何位で丸めるかによって、範囲に入るかどうかが変わることがあります。営業日で割るか暦日で割るか、初月は精算幅を使わずに時間単価だけで払うかなど、日割りのやり方は契約によって違うので、注文書の定めに合わせます。月途中の退場が待機につながる場合の事務は → SESの待機 でも書いています。
端数処理で金額がずれる理由
精算の端数は、時間の丸め方、時間単価の丸め方、精算額の丸め方の3か所で出ます。どこで丸めるかが契約で決まっていないと、同じ稼働時間でも金額が数円から数十円ずれます。
上の上下割の例でも、控除単価4,285.71…円を切り捨てて4,285円にすると130時間の月は557,150円、四捨五入して4,286円にすると557,140円になり、10円違います。
精算単位が15分の契約で、上限を2時間15分超えた月を考えます。2時間15分は2.25時間として計算します。時間単価を先に切り捨てて3,333円×2.25時間とすると7,499.25円で、精算額を切り捨てて7,499円です。丸めずに600,000÷180×2.25と計算すると7,500円になり、1円違います。
時間の丸め方にも注意が要ります。15分単位で精算する契約で、稼働表が1分単位で付いているときに、日ごとに15分単位へ切り捨てるのか、月の合計を切り捨てるのかで結果が変わります。どちらにするかは契約の定めに従います。
| 丸める場所 | 決めておくこと |
|---|---|
| 稼働時間 | 精算単位(15分・30分・1時間)、日ごとか月合計か |
| 時間単価 | 1円未満の切り捨て・四捨五入・切り上げ |
| 精算額 | 時間単価×時間の結果の1円未満の扱い |
| 消費税 | 請求書1枚につき税率ごとに1回(国税庁 インボイスQ&A 問57) |
請求書への書き方は → SESの請求書 に計算例つきでまとめています。
Excelでよくあるミス
精算をExcelやスプレッドシートで計算している会社は多く、表そのものは数行の計算式で作れます。上下割なら、たとえば次のような式になります(B列に月額、C列に下限、D列に上限、E列に実稼働時間)。
- 超過単価:=ROUNDDOWN(B2/D2,0)
- 控除単価:=ROUNDDOWN(B2/C2,0)
- 精算額:=IF(E2>D2,(E2-D2)*超過単価,IF(E2<C2,-(C2-E2)*控除単価,0))
式は単純でも、毎月使い続けるうちに次のようなミスが起きやすくなります。
- 超過も控除も同じ時間(上限だけ、または下限だけ)で割っている
- 行をコピーしたときに参照がずれ、隣の要員の月額や精算幅で計算している
- 絶対参照($)の付け忘れで、超過単価と控除単価が入れ替わる
- 稼働時間を「8:15」のような時刻の形式で入れていて、24を掛けずに計算している(Excelの時刻は1日を1とした小数なので、8時間15分は0.34375として扱われる)
- 15分を「0.15」と入れてしまう(正しくは0.25)
- 日割りの日数を暦日と営業日で取り違える
- 年末年始やGWの月に下げた下限を、翌月に戻し忘れる
- 契約ごとの違いをIF関数の入れ子で書き足し続け、作った人しか直せなくなる
- 計算した金額を請求書の雛形に手で書き写すときに打ち間違える
表を作った人がいなくなると、どの式が何を計算しているのか誰にもわからなくなる、というのもよくある話です。
SESの会社の実務で気をつけること
SESの会社の毎月の実務では、売りと仕入れで精算の条件が違うことが粗利に直接出てきます。お客様先との契約は上下割、BPとの契約は中間割というように、同じ要員について割り方が違うことは珍しくありません。
お客様先へ月額70万円・140〜180時間・上下割、BPへ月額60万円・140〜180時間・中間割で出している要員で計算すると、次のようになります。
| 稼働時間 | お客様先への請求 | BPへの支払い | 粗利 |
|---|---|---|---|
| 160時間 | 700,000円 | 600,000円 | 100,000円 |
| 190時間 | 738,880円 | 637,500円 | 101,380円 |
| 130時間 | 650,000円 | 562,500円 | 87,500円 |
190時間の月は、お客様先への超過が700,000÷180=3,888円(切り捨て)×10時間=38,880円、BPへの超過が3,750円×10時間=37,500円です。130時間の月は、お客様先からの控除が700,000÷140=5,000円×10時間=50,000円、BPへの控除が3,750円×10時間=37,500円です。下回った月は、お客様先から引かれる額の方がBPから引く額より大きいので、粗利が12,500円減ります。精算幅そのものが売りと仕入れで違う場合は、さらに差が大きくなります。粗利の考え方は → SESの利益率 で書いています。
毎月の運用では、稼働表がそろわないと精算が確定しないことも悩みの種です。祝日の多い月は下限を割る要員が増え、控除の計算と確認が一度に重なります。稼働表の提出が遅れた要員の分だけ請求書が出せず、締めた後に稼働表の修正が届いて請求書を作り直すこともあります。精算幅の条件を、要員ごと、お客様先とBPの両方について一覧にしておき、月末に「誰が範囲の外に出そうか」を早めに見ておくと、月初の確認がずいぶん楽になります。
お客様先との精算条件とBPとの精算条件をそろえておくことは、契約の段階でしかできません。精算幅、割り方、精算単位、端数処理は、注文書を交わす前に売りと仕入れの両方で確かめておくと、後から差額で揉めずに済みます。契約書の書き方は → SES契約書、BPとの毎月のやり取りは → SESのBP でまとめています。
精算条件の法的な扱いや個別の契約の判断は、専門家に確認してください。
精算と請求の計算をまるごと任せたいとき
RY consulting は、SES企業の請求事務だけを引き受けています。お客様先への請求書を御社の書式で作ること、BPやフリーランスから届く請求書を照合して相違があるものだけをお知らせすること、稼働表の提出状況を営業担当ごとにお知らせすること、月に一度、入場・終了・単価変更の確認事項を伺うことが仕事です。御社にお願いするのは、稼働表と請求書を共有フォルダに入れていただくことと、月1回の確認事項へのご回答だけです。月額はエンジニア10名まで50,000円、11〜20名70,000円、21〜30名90,000円、31名以上は個別のお見積りで、初期費用は100,000円です(いずれも税別)。契約期間の縛りはなく、最短3営業日で作業を始められます。精算幅の計算に毎月時間を取られているなら、まずは15分で相談してください。